21-拾壱「絶やしてはいけない」

「使命感を持つ……とか

そんなカッコいい話ではないのだが

「これは無くしてはいけない、

 受け継ぐ人を見つけるまで私が守らねば」

と強く思って動いたことがひとつだけある。

 

それは趣味で通っている「ものづくり教室」でのこと。

 

その教室に興味を持って通い始めた私が

作る作品はとても不器用で下手だった。

 

周りはといえば、とても上手に作る人がたくさんいた。

 

なので常に絶望と落胆の淵にいるような私は

この中で真っ先に脱落するだろうな、と自分でも思っていた。

 

しかし実際はそうでもなかった。

 

それなりに上手い人は、そこで満足して辞めていく。

また、仲良しグループで入ってきた人たちは、

グループの誰かが抜けると一斉に辞めていく。

 

そんな中、作品が出来上がるたびに

「くそぉ今度こそはぁあ」

執念だけで残留した私は、いつしか古株になっていた。

 

一番下手な自分が残って申し訳ない気もするが

満足いかないものしか作れないことが

もう悔しくて悔しくて仕方ない。

 

去った先輩方を受け継ぐ形で

新しく入った仲間たちに、作業の流れくらいなら

アドバイスなどもできるような立場になった。

 

そして気づけば、そのものづくりに使う、

特殊な装置の動かし方を知っているのが

私だけになっていたので、

指揮を取るようなことも定着していく。

 

だがそれも、講師の先生が亡くなったことで

教室は数年ほど休止状態になった。

 

その間もずっと、ものづくりに使う装置のことが気がかりだった。

あれは特殊なものだから止まりっぱなしにしておくのは惜しい。

 

そんな時、新しく講師を希望する人が現れたという連絡が私の元に届いた。

 

即座に元の仲間たちに連絡を入れたが

あまりいい返事はもらえなかった。

「元の先生の教え方が好きで通っていたから」と。

 

それを聞いて自分で出した答えは

「自分ひとりでもやる。あの装置をもう一度動かす。あれは絶やしてはいけないものだ」だった。

 

新講師にも「もしかしたら生徒は私ひとりかもしれないですけど」と伝えて再開した。

 

不思議なもので、

元からの仲間から数人が戻り

さらに新しい仲間が割と集まって、教室は復活を遂げた。

 

そんな経緯を経て、現在も続く教室だが

相変わらず私は下手なまま

ただ「悔しい」だけで創作を繰り返し

装置を動かす指揮をとっている。

 

私がいつ辞めても

この装置を動かしてくれるメンバーたちならいいなって思うが……

 

「仕事があるので今回は行けません」

という連絡を受けるたび

教室に合わせて仕事の休みを取ってる自分との

気持ちの差を埋める方が先かな、とも考えたりする。

 

現在はコロナ禍で活動も減ってはいるが

どうか細々とでも灯ってる炎を絶やさずに

守っていけるといいのだけれども。

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「円盤の10」

チームプレイ、築いた技術の伝承……

というと自分にはこの話しか今のところ思いつかないなあと思って書いてみた。

先日書いた「D4」とちょっとテーマが似てたが、みんなが作る作品が同じ場所(完成)に向かう、それに関わるという意味なら「D10」はこれかな、と。

このカードは私にも大事なポイントではあるが、

カードの絵のコインの並びと水星を全面に押し出しているのがとても興味深い。